tech venture business » Archive of '2月, 2008'

どのベンチャーで働くべきか

どうも。先週末から暖かい日々が続いております。そろそろ寒さの峠は越した…なら良いのですが。

さて、将来起業をするつもりだ、自分は起業向きではないが大企業向きでもない、面白いことをやりたい等々、ベンチャー企業で現在働いている方も今後働きたい方も多くいらっしゃるとことと思います。では、どのベンチャーで働くか、というのが今日の話です。

起業から数年経って、ある程度結果を出し成長しているベンチャーであれば、ある程度の判断材料があるかと思いますが、出来立てホヤホヤのベンチャーに初期メンバーとして加わる場合はどうか?特にここ数年のように、Web2.0ベンチャーがバブリーに増えているような状況では、似たようなアイディアも含めベンチャーが毎日沢山あちこちで生まれていて、どれがイケそうなのか判断するのが難しい。

先日エンジェル投資をうけたばかりのPath101の創業者で、元VCのCharlie O’Donnellが、この点についての考えを、引き手あまたのエンジニアを対象に記していたので、取り上げて見たいと思います。(彼によると、近頃はLinkedInなどでPHPやAJAXがレジュメのキーワードにあるだけで面識のないベンチャーやリクルーターなどからお呼びがかかる、というほどの売り手市場だそうですが、エンジニアの皆様、そうなんですか?)

これだけ機会があると、”interesting technical challenges and things I’d like to work on”(技術的に興味深いものでやりがいがある)という観点で絞り込んでも、まだ絞りきれないとし、次の5つを考慮点として挙げています。(以下キーフレーズの引用+内容要旨の意訳)

1. Is this a viable concern? In other words, is this company going to be around in a year?
非常にクールなアイディアに見えても、何がしかのお金が入ってこないと想定した場合、そのベンチャーはどの位の期間、生き延びられるのか?プロダクトやサービスを開発してから資金調達をすればいい、と簡単に考えてはいけない。VCやエンジェルは「面白いねー」なんて言うことも多いが、実際彼らから資金を調達できる可能性はすごく小さいのだ。創業者やエンジェルやその他から何がしかの資金が調達できていなければ、避けるべし。

2. What are they willing to give you?
ビジネスサイド、技術サイド、それぞれが貢献して成り立っているのが組織だ。ビジネス側の人が自分のアイディアや経験をもとに起業した故に自分の貢献度を過大評価し、ごく僅かな株式しかエンジニアにオファーしないようなベンチャーは避けるべし。

3. ON THE OTHER HAND, don’t underestimate the value of relevant experience either.
その業界での経験が全くないエンジニア数人のチームでも、開発してすぐに競合に売却するという目的ならば良いかもしれないが、市場にかなりのインパクトを与えるプレーヤーになり人々の行動を変革するような大きなことを目的としているならば、業界での経験も人脈もあるメンバーが必要だ。技術や製品があるだけではビジネスにはならない。

4. Is the market big enough?
そのベンチャーが成功するためには多くの人が今までにした事がないことをする必要があるのか?コンピューターサイエンスの学位を持たない人でそのビジョンを理解できる人がいるか?テクニカルではない友人10人に意見を聞いてみるべし。

5. And finally… how dedicated is the team to this idea?
既存チームメンバーの人生においてそのベンチャーがどれ程重要なものか? 創業者が暇な時にふと考えた思いつきのアイディアなのか、今までやってきたことの集大成のアイディアなのか? 「創業者がどのくらいそのベンチャーに懸けているか」なんて大げさだと思うかもしれないが、成果が中々見られず資金も底をついているなんて時には、犠牲も惜しまない何が何でもという強い情熱が必要だったりするものだ。

如何でしょうか?それぞれ、確かに、という感じはするのですが、結局は自分が何を求めているのかによると思います。「数年がむしゃらにやってビッグになる!」ということを求めているならば、上記のような基準で勝ち馬を見つける必要があると思いますが、「結局どのベンチャーが上手くいくかなんて一流の VCでも分からないのだから、自分にとってやりがいがありスキルを延ばせる可能性が何がしかあるところで働く」という場合には、それ程ビジネスの成長性の重要度は高くないのかもしれません。(潰れた場合はまたすぐ就職先を見つける必要には迫られますが) 私自身が今何かを選ぶとしたら、自分がそのビジョンに強く共感できるか、というのが重要なポイントかなと思います。

どの目的の場合にも考慮すべきだと私が思うのは、誰とチームを組むかということです。長期的にその人を知っていない限り、長所短所の隅々まで分かり得ないのは当然ですが、短期的にであれ学べる何かがあるとか尊敬できるとか、そういった部分がないと難しいように思います。ベンチャー自体が上手くいかないことになったとしても、そこで出会えたチームはその後の宝になることもありますし、何しろ、合わない人と小さい組織で働くのは辛いし建設的ではないですからね。

皆様はどう決断されますか?

それでは今日はこの辺で。ではまた。

誰もビジョンを分かってくれない?!

どうも。今日は起業のビジョンとそれに対する人の反応の話を。

創業者の行う重要なこととしてビジョンを研ぎ澄まして人に明確に伝えるということが挙げられますが、あらゆる場面で自分のビジョンを説明した時に、どういう反応が返ってくるか、またそれをどのように活用すべきか、という点についてJason Calacanis(詳細の経歴はこちら)が興味深いことを書いていたので、触れたいと思います。

アイディアやビジョンに対しては、色々な人が様々な反応を示し、ベンチャーが成長するにつれてその意見もまた変わっていくわけですが、彼の Silicon Alley Reporter、Weblogs、そしてMahaloでの経験によると、起業一年目に関しては、それらの反応は大まかに3つに分かれ、割合も同様のパターンが見られたそうです。

その1つ目のタイプがThe slow masses(のみ込みの遅い一般大衆)で全体の70% 、2つ目がthe knowledgeable skeptics(もの知りな懐疑派)で20%、3つ目がthe savvy dreamers(見識のある夢追い人)で全体の10%ということです。それぞれの特徴を以下、引用+意訳します。

The slow masses(のみ込みの遅い一般大衆)

1. Typically work three levels below someone who is innovative. Their boss might be innovative, but most likely it’s their bosses boss who is the real visionary.   (革新的な人から3段階下で働いている)
2. They have probably never created a company, and if they have it was probably years ago and it failed. They have no interest in starting another one.  (起業した事がないか、あってもかなり昔でかつ失敗しており、何れにせよ今後起業する気がない)
3. They say things like “I don’t understand” and “why don’t you do INSERT LAST YEARS TREND HERE instead?” (「理解不能」とか「代わりにXYZ(直近の過去に流行ったもの)をやれば?」等と言ったりする)

The knowledgeable skeptics(もの知りな懐疑派)

1. Typically have run something successful, but it was probably not that successful. Perhaps an also-ran type business (i.e. someone who came in second or third place in their market).  (業界2-3番手のベンチャーを起業した等、ある程度の成功体験がある)
2. They might have lower self-esteem. They might feel like they haven’t been given enough credit in life (either financial or attention-based).  (そのわりに自信があまりなくて、正当な評価を得ていないように感じている)
3. They say things like “that’s interesting, but it will fail because…” or “someone tried that it doesn’t work.”  (「面白いけど失敗するね、なぜなら…云々」「既に他の人が試したけど上手くいかなかったよ」という類の事を言う)

The savvy dreamers(見識のある夢追い人)

1. They are successful and many of the skeptics and masses in the other 90% say it’s because they got lucky.  (他の人が唯の運だと恨むほどに成功している)
2. They say things like “that makes total sense,” “I get it.. brilliant!,” and “can I invest?” (「すごく納得がいく」とか「なるほどね、素晴らしい!」とか「投資させてくれる?」等と言う)
3. When faced with challenges they are dismissive and say things like “X, Y, or Z could be problem but I’m sure you’ll figure that out as you go.” (困難があっても深刻に考えすぎず、「XかYかZは問題かもしれないけど、やってくうちに解明できるはずだよ」等と言うタイプ)

特徴の記述はかなり偏見が強い気はしますが、どうでしょうか。特定の分野について詳しいとか知見があるとか、ビジネスチャンス一般に関して鼻が効くとか、ベンチャーに関してその人なりの理解と成功法則を持っている人なども色々といるので、実際はもっとばらけているとは思うのですが、すごく単純化すると、こういう感じに落ち着くのかも知れないですね。

まぁ、人をどのように見るかは、個人差があるので主観的なことは確かですが、良さを理解してくれない人が多数、一定の良さは認識するものの上手くいくはずがないという人が結構いて、僅かの人が良さをよく分かって応援してくれる、という感じに分かれるのは、直感的には納得がいく感じですね。

で、中々面白いなと思ったのは、1年目にそれぞれのタイプとどう関わるべきかということ。以下要点を。

– アイディアが革新的であるほど、「一般大衆」が1年目にそのアイディアを理解する確率は低いので、彼らの意見は気にしないこと。2年目、3年目にすっかりファンになり、当初否定的なことを言ったことを忘れていることも多い。

– 「懐疑派」は頭が良くビジョンを理解するけれども、否定的な意見を論理的に言うことで夢見がちな人を撃墜することを使命とし、そのことで自分の聡明さを誇示するタイプである。彼らとは多くの時間を費やし上手く活用すべし。実際に彼らの批判は的を射ていることが多いので、問題点の指摘などは良く聞いてメモをとること。但し、彼らの概してネガティブな態度は伝染しやすいので無視すること。彼らはマイナス面を過大評価し、プラス面を軽視する傾向にあることを認識せよ。

– 「夢追い人」はポジティブ思考で、偉大なことは犠牲と忍耐なくしては成し遂げられないことを知っている。彼らには出来れば自分の事業に関わってもらうべし。彼らのポジティブさがモメンタムをもたらし、懐疑派や一般大衆をも巻き込むことになる。彼らは精神的な支えになるし、アイディアを提供してくれたり、何時間も議論に付き合ってくれたりもする。但し、楽観的すぎる面もあるので注意。

そうですね、こうしたバランスは重要だと思います。「夢追い人」とばかり会っていると、何事も楽観的に見すぎて過信しすぎることもありますし、「懐疑派」の正当な批判や質問には耳を傾け、改良に活かして行くことは大事ですね。但し、一年目は特に信じる力が物を言うということもあるので、気分的にはポジティブでいることもポイントでしょう。また、この記事では触れられていない2年目以降には、「分かる人さえ分かればいい」というわけにはいかなくて、マスに対してどのようにビジョンを訴求していくかということが課題になってくるのではないかと思います。

そして複雑なのは、元記事でも指摘されていますが、実際はこれらの異なるタイプが自分のチーム内にいたり、投資家にいたりすることが多いということです。温度の異なる人々とどのようにコミュニケーションをはかり、リードしていくかというのは結構難しいですが、こうしたタイプと時期的な必要性といった観点で考えてみるのも有用かもしれませんね。

如何でしょう。経験談などありましたら、ぜひ。

今日はこの辺で。ではまた。