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組織をどうスケールすべきか

スタートアップが急成長する時に最も難しい問題の一つが、如何に組織を拡大するかです。短期間にたくさん採用する必要があるけれども、急いで当面必要なスペックだけにフォーカスすると、後で後悔することになるケースは多いものです。

エンタープライズ向けのサービスの中で最もホットな企業の一つに、Dropbox法人版ともいわれるBoxがあります。ここ数年で急成長しているスタートアップです。そのCEOのAaron Levieは若く、若干27歳。かなりセンスがよく、次代のホープ的な形容をされることが多いFounder & CEOです。

その彼が組織のスケールについて学んだこと、というのが中々参考になるので、以下コツとして上げられている要点を紹介します。

1.各部署やチームが必要な人材を選ぶだけでなく、「人事」のような中央横断の組織をおき、会社全体のカルチャーなどの観点からフィットを判断する。

2.「the 10-person test」を通るか見極める。採用する人が例え400人目の社員であろうとも、その人をオリジナルの10名チームに欲しいかどうか、を考えるということ。組織が大きくなったからといって採用基準を下げる必要はどこにもないはず。

3.例え30名の組織であっても、何もしなければ築こうとしているカルチャーは伝わらない。人はそれぞれ過去の経験から、組織とはどういうもので、どのように上司や部下や同僚とコミュニケーションをすべきか、ということに関して既成概念をもっているものだ。なので、些細なことでも(判断などの)行動が常にカルチャーに見合うものであるように注意すべきだし、新しく採用した人にカルチャーを伝えたり、定期的にリーダー達がスピーチを行うなどのコミュニケーションの仕組みが必要だ。

4.組織が35名を超えるくらいになると、ファウンダーがすべての決定にかかわる事は不可能になる。かかわり続けると大きなボトルネックになるので、例えばCOOなど、スケールを可能にするスキルを持つ人を連れてきたり、リーダーシップチームをつくる必要がある。

5.CEOとはどうすべきか、ということに関する知識をできるだけ習得する。本や動画、ネットetcで、戦略などビジネスに関するものの知識を得たり、いろいろなCEOの話に触れたり、問題を解決した過去のケースなどについて学ぶべき。判断材料となるデータがないときに、こうしたモデルはとても役にたつ。

6.自社がベストであるべき点にフォーカスを定め、その分野で特に知られる企業で経験を積んだ人を採用すべき。例えば、最高のカスタマーサポートを提供する、と決めた場合、カスタマーサポートのリーダーは例えばZappos出身から雇うべきで、Oracleから雇うべきではない。

 

如何でしょう。なかなかキチンと実行するのは難しいけれども、大事なことですよね。ちなみに、Boxは「法人向け」といった枠にとらわれず、色々なベストプラクティスを取り入れています。最近のTweetでは以下のように言っています。これにはかなり納得。

Future enterprise software leaders will build like Facebook, design like Square, measure like Zynga, and support like Zappos.

では今日はこの辺で。

スタートアップの成功はTシャツから

おしゃれな日本の皆さんにとってはちょっと不思議かもしれませんが、当地スタートアップでは、基本のスタイルはTシャツです。(特にエンジニアの方々)

何の変哲もないものや卒業した大学のものから、小ジャレたメッセージ性の高いものまで様々ですが、スーツやビジネスカジュアルに反して、Tシャツで仕事に行けるというのは、まあ自由なスタートアップカルチャーの一部なわけです。

で、そのTシャツですが、「自社Tシャツを作ることが実はすごく重要」という話を最近読んだので紹介します。LinkedInなどを経てきたAdam Nashはブログで5つの理由を述べてます。以下要点を抜粋して、コメントを付します。

1.Empowerment (エンパワーメント)

Giving out t-shirts tells your employees, implicitly, that you get it.  You hire only the best, and the best can wear whatever they want.  It says you know that you value merit over appearance; a working prototype over an MBA.

会社が社員の優秀さを評価しており「見た目より実」な価値観を共有している、ということを暗に示すことができる。

2. Incentives (インセンティブ)

Let me just tell you, free t-shirts evoke some sort of primal response at a high tech company.  …..

You’d be shocked at what a $200 per person per year budget for t-shirts will do for employee morale comparatively.

同様の額のものを現金や他の物であげると返ってマイナスなこともあるが、Tシャツはとにかく喜ばれる。一人につき年間$200のTシャツ予算が従業員のモラルに与える影響は計り知れない。

3. Tribal Cohesion(同族の結束)

It may sound subversive, but t-shirts can provide many of the same benefits of camaraderie and tribal cohesion that uniforms did, without the top-down oppression.

制服には自由には相容れないが仲間意識を与える利点があるのは確か。Tシャツは(色やデザインなどバリエーションがあるので)押し付けの制服にはならず、その良い点を享受できる。

4. Tenure Based Seniority (在職期間による序列)

High tech companies are largely meritocratic, and as they grow they tend to define roles based on skills & experience rather than “time at the company”.  However, there are positive aspects to rewarding those who have “bled for the company” over the years, and put their hearts and souls into building the business.  T-Shirts, in an innocuous way, implicitly do this by almost always becoming “limited editions”.

基本的に実力主義でポジションは年数に関係ないが、時に厳しい立ち上げの時期から支えてきた古株に敬意を示すのは良いことだ。それはTシャツを機会ごとに「限定」でつくることで、暗に達成できる。例えば今では数百人の規模に成長したが、数年前のVersion 1.oローンチを記念したTシャツはそれを牽引した10人しか持っていない。それは新入りには羨望に値するもので、古株はプライドを感じる。

5. Branding (ブランディング)

While being careful not to interfere with the uniqueness of shirts given to employees, make shirts for your developers, your fans, your early adopters.  Long before they become vocal advocates for your brand, they will gladly showcase it if you let them.

自社や自社製品が好きな人たちは、何の制限もかけなければ、頼まないでも自社を勝手に宣伝してくれるありがたい存在だ。Tシャツをあげれば、喜んで各所で着て宣伝してくれる。上記4の理由から社員用のものとは別のものにする必要があるが、外向けのTシャツもガンガン作るべし。

どうでしょう。Tシャツをつくるコストは低いですが、その恩恵はかなりのもの。皆が着たくなるようなデザイン、色彩にすることで、その効果は更にアップします。会社のロゴが入った1パターンのものではなくて、限定品でたくさんつくる、というのは確かに良いですね。

スタートアップには良いチーム・組織作りが欠かせません。デザインや質にはちょっと手間もお金もかけて、欲しいと思われるものを様々な機会限定やチーム限定で作ってみるのは、すぐに実行できるなかなか良いアイディアなのではないでしょうか。ぜひお試しあれ。

では今日はこの辺で。