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より多くの人に使って欲しいという思い

どうも。昨日のエントリーで紹介した本の内容に沿うような、目先のことではなく世界に貢献すべくがんばっている起業家の、さわやかであついエントリーに出会ったので意訳しつつ触れたいと思います。これはアメリカではトップシェアを誇るオープンソースブログソフトウェアのWordPressのファウンダー、Matt Mullenwegによるものです。(ちなみに我がブログもWordPressを使っています)

WordPressを始めた時が19歳であったということもあり、マスコミが「若い起業家が、ある日突然素晴らしいアイディアを閃き、一夜のうちに成功を収めた」というステレオタイプな話にインタビュー記事をおとしこみたがっているようだとし、もちろんその方向性で話をすればマスコミ受けしてさらに知名度は上がるようだけれども、そのような事実とは異なる煽動的な記事は、短絡的な起業を増やし本当に重要なことを成し遂げることを阻害すると批判しています。

What’s worst is I think these stories sell a false promise and hope to people outside of the industry — it attracts the wrong type of entrepreneurs — and inside of the industry it distracts us from what really matters.

実際には、WordPressは4年間の絶え間ない努力があったからこそ今に至っており、これから先何年もの努力が待ち受けているもので、「一夜のうちに成功した」とは程遠いと。また、自分及び数人だけで創ったのではなく、パッションを共有する世界中の多くの人の協力なくしは成し得なかったと述べています。

そして、彼が何を追求しているかというと…

It’s not about selling out to a single company, it’s dozens of companies independently adopting and backing an open source platform for no reason other than its quality. I’m not a millionaire, and may never be, but there are now hundreds of people making their living using WordPress, and I expect that number to grow to tens of thousands. That’s what gets me out of bed in the morning, not the prospect of becoming a feature on an internet behemoth’s checklist.

金でも名誉でもなく、より多くの人に使ってもらうことを喜びとしてるわけですね。

実はこの「自分の創った物をより多くの人に使ってもらうことを喜びとする」というのはエンジニア起業家には割と多い、いわばクラシックなモチベーションです。ですが、90年代や昨今のようなブームになると、周りで短期間に大金を得た人を見るにつけ、表現は悪いですが、猫も杓子も起業という状況になってしまうことがあります。そうなると、スコープが小さくモチベーションが金銭面に偏ったベンチャーも数多く、逆にこのようなクラシックな発言を耳にすると新鮮に感じてしまうわけです。 いやー、良いですね。

彼はまだ23歳。これからもこの至極まっとうな気持ちと情熱でがんばってほしいものです。 歳云々というと怒られちゃうかもしれませんが、でもやはり、この年齢で地にしっかり足をつけて、自意識過剰にならず、チームあっての自分とはっきり認識していることは、そうあることではないと思います。 大人だなー。

自分が19の頃なんて、何してたでしょうね。少なくとも仕事なんて事は考えてもいなかったはずです。その時なりの一生懸命さはあったような気もしますが、自分に対する内向きなもので、外の世界に向けてあんまり考えていなかったのではないかと思います。 まあ、人それぞれですけどね。皆さんはどうですか?

では今日はこの辺で。皆様良い週末を。

「The monk and the riddle」

どうも。今日は昨日読んだ本の紹介を。昨年10月に紹介した「Startup」にもCFO & VP of Business Operationsとして登場しているRandy Komisarのもので、僧となぞかけ(禅問答と言ってもいいのかな)という、Harvard Business School Pressにしては一風変わったタイトル。これもまたかなり前、2000年に出版されたものですが、今でも色褪せない内容です。

Randy Komisarは弁護士出身で、Apple始めシリコンバレーの数社でオペレーションの役割を歴任した後、Virtual CEOとして数多くのベンチャーにメンター、アドバイザーとして関わってき、今は一流ベンチャーキャピタルのKPCBでVCをしています。

この本は著者の経験と信条をもとにしつつ、さらりと面白いストーリー仕立てになっているのですが、ハウツーものや武勇伝とは異なり、起業やキャリアそして生き方に対する真摯な啓蒙書であると同時にベンチャー起業・経営に実用的な視点を与える仕上がりになっており、その短さや一見シンプルな作りに反して何通りもの読み方ができます。

本筋のメッセージはというと、まずはDeferred Life Planを取り入れるなということ。これは、楽しんでいる仕事ではないけど今はとにかくお金を稼いで定年してから本当にやりたい事をやろう、というような切り離し先送りの人生を歩むなという意味。それは間違ったリスクの取り方だと。もちろん状況は変化するので一生やりたい事を1つだけ見つけるというわけではなく、その時その時で、明日死んでも後悔しないような情熱をもって出来る事に早速取り組めと。

だからといってゴールを達成することが重要なのではなく、曲がっていようが真直ぐであろうがその道筋自体が自分を表現し様々なことを吸収する、生なのだということ。 実現可能そうだからとかお金になりそうだからという視点でスコープを小さくしないこと。それでは結局自分の情熱を注いでやりたいことにはならず時間の無駄である。逆に自分のやりたい事であれば目的地から迂回していても無駄ではない。

その他、私個人としては、旅好きだったり、いわゆる一直線なビジネスタイプではなく、雑然としたクリエイティブ世界と整然としたプロフェッショナル世界の両方に足を突っ込んでいたいところとかに、妙に勝手な親近感を覚えました。そして、テクノロジーではなくプロフェッショナルサービスのバックグラウンドを持つ者として、自分がワクワクするテクノロジーベンチャーとどのように関わっていけるのかということを考えるにつけ、参考にもなりました。

また、架空の話であるにせよ、シリコンバレーでの起業、ビジネスプランの考え方、資金調達等といった面でも学ぶところは大きいと思います。

この本、暫らく前に買ったのですが読まずじまいで、つい先日ふと読む気になったんですね。
そしたら丁度しっくりきて非常に良かったです。その時の状態に合うように、無意識のうちに、本とか映画が向こうから近づいてくるようなことってたまにありますよね。 さくっと読めるし、お薦めです。

残念ながら日本語の訳本は無いようですので英語版リンクしておきます。平易な英語ですのでぜひ機会があれば読んでみてください。