tech venture business » Archive of '12月, 2006'

お子様がVC投資を決める時代

どうも。いやー寒いですね。一年中涼しい代わりに暖冬のはずが…なんだかハズレくじを引いちゃった気分です。年末の東京帰省で暖かいお風呂に毎日入れると思うと顔がほころんでしまいます。そういえば随分前に当時国連でご活躍されていた明石さんが、「日本人は何故海外に根付いて活躍できないのか」という類の質問に対して「常に日本に帰って温泉につかりたいと思っているから」と応えていたのを記憶しています。確かにアキレスではありますな。そのために日本に帰るかどうかは別として、感覚としてお風呂はやっぱりいいよねー、というのは恐らく殆どの日本人が持っているものと思います。

さて、その感覚として直に分かる、という事についてちょっと考えさせられる記事が週末のNY Timesにありました。テクノロジー系ベンチャーに投資しているVCが投資先を選んだり、投資しているベンチャーの経営指南をする際に、自分の子供達等の身近にいる”若い人”の意見を参考にすることが増えている、というのです。

その背景は、特にSNS等のWeb2.0的なもの、World of Warcraftのようなオンラインゲーム、携帯でのコンテンツ等々の分野において、何が良いのか他より優れているのか、またこれからどんなものが流行るのか「自分でやらないから分からない」というのです。主として30代以上であるVCと違い、こういった技術を当然として育ってきた若い世代のほうが自然に分かるとも。

でもね、これって、安直過ぎないですか?最初は子供がやっているから興味を持ったとかは当然アリだと思うのですが、この記事で書かれているようなトーンだと、もっと広範囲に自分の子供という少数の断面的感覚が幅を利かせちゃいそうですよね。起業家は自分の人生を賭けVCからの投資を確保するのに躍起になっているというのに…。私は30代でこの記事によると”分からない古い世代”みたいに言われていることもプチッときたのか、なんだかもやもやした何とも言えないものが沸いてきました。まだ考えがまとまっていないのですが、プチッときた勢いで違和感って言うか不快感みたいのをまずは取り合えずバラバラと書いてみます。

* いつの時代にもオジサンやオバサンには分からない若者の中で流行っていることや言葉や気持ちみたいなものってあったのでは?

* 半導体とかハードウェアとかインフラ系ソフトウェアとかのベンチャーに投資する際には、自分はそういった分野のテクノロジストでなくとも、専門家の意見も聞くなどしてロジカルにビジネスの見込みを評価して投資してきたはずで、いつも”感覚として分かる”わけでないのではないか?

* いくらコンシューマー向けで”自分達大人向けではない”ように見えるものでも12歳位の子供は中心のユーザーではないはず。そんな低年齢層を狙っているビジネスはそもそも成り立たないし、彼らの1年毎の違いは大きく数年後に高校生になった頃にはまた全然違う嗜好を持っているので数年後のターゲット層として考えるのもおかしいのでは?

* こうしたビジネスをしている大人がロジカルに考えて理解できない場合は、そのベンチャーはそもそも何かの問題を解決していないのではないのか?

* アメリカでは特に子供の話をすることとか、子供を会社のパーティーに連れてきたりということが微笑ましく思われることも多いが、このVC関与は行き過ぎなのではないか?自分で手を染めて考える事を放棄していないか?ファンドから数%もの管理費を払っている機関投資家はどう思うことか?

* 従来からあるように本当の対象ユーザーのグループから意見を聞くとかではなく、どうして自分のところのいわゆる裕福なお家の子供なのか?これって働いている事で子供と多くの時間を過ごしていないという罪悪感の裏返しで、自分の子供と興味を共有するという極めて私的な努力の一貫なのでは?

* 子供にとってもビジネスを知るいい機会だという正当化は、如何なものか?「うちの11歳の娘が”彼らのビジネスモデルはよくわかんない”なんて言うのよ」とか言うのは、ちょっとcompetitiveな要素があったり、自分みたいに振舞う子供を喜ぶというのは、何ていうかペットに洋服着せちゃうようなエゴっぽいものではないのか?

ちょっと爆発してしまいました。こんな事書くと、VC嫌いとか子供嫌いの人非人とか言われそうですね。

上で挙げた批判見たいなものは、VCがちゃんとその仕事をしていないんじゃないか、という疑問の類なのだと思います。でも、気になるのは、本当にどこかのラインで埋まらない世代間ギャップみたいなものが生じてきてしまっているのだろうか、ということ。

この記事でも触れていますが、90年代のインターネットバブルの際には、若い人の意見を聞くなんて事はなかったそうで、VCも自らどっぷりつかって Amazonで本を買ったりNapsterから音楽をダウンロードしていたらしいのです。それが今回は「分からない」というお手上げ状態。Web2.0関連はやはりバブルでピンと来ないものに無理やり投資すべきではないということなのか、それとも実際の年は何であれ、頭の固くなってしまった人には「分からない」という領域、或いはやる人=分かる人、やらない人=分からない人という領域にインターネット関連技術が来てしまったのか…?   皆さんどう思われます?

纏まりの無い話になってしまいました。当面のところ、インターネット関連でVC投資にお悩みの方は通常通りにVCにアタックするのではなく、その子供達に売り込むのが良いかもしれないですね。向こうがその気ならその裏をかくというのもアリでしょう。

あ、それから、日本風の湯沸しシステムの深ーいお風呂ってこの辺でも手に入るのでしょうか。知っている方がいらっしゃたらぜひ教えて下さい。 では。

サウンドクリップで気分を表現

今日は月一定例のNew Tech Meetupに参加してきました。4つのベンチャーがプレゼンとQ&Aをし小粒感は否めないのですが、その中ではRazz という会社は結構つかみは良い感じでした。

オーディオのエンターテインメント性に注目して、それを携帯またはブログやSNS等のウェブサイトに取り込むというもの。例えば携帯の場合だと、友達に留守電を残すときにサウンドクリップを使ってお笑いのネタを一言入れたり、アニメ等のキャラクターの声でメッセージや名台詞を入れたりというちょっとしたカスタマイズができるとのこと。着メロとか壁紙とかを買う感覚なのでボリュームが多ければそれなりの収入にはなりますね。絵文字等と同様で好みは分かれるものの、上手くいけばバイラル性は高そうですね。プレーヤーのダウンロードは無料で、実際その内の25%がサウンドクリップのパッケージを購入するほど転換率は良いそうです。

このサウンドクリップのパッケージに関しては、単純な音のパッケージだけでなくRazzがアニメやコメディアン等のコンテンツ側と契約してその流通の役割も果たすため、通信業者がそれぞれ独自に契約をする必要が無いというハードルの低さは、コンテンツ収入を狙う通信業者に魅力のようです。

更にRazzの技術を使って様々なサウンドクリップをミックスすることもできるそうで、自分なりの面白いものを録音して、ブログやSNSにポンとのせることが可能です。

要はこの種のオーディオメディアに関しては製販をおさえようという方向性なのですね。

私は着メロの購入暦なし且つ絵文字どころか携帯メールは殆どしないくらいのアッサリ派(古典派?)なので、こうしたサービスへの需要がどれほどあるのか実感としては分からないのですが、皆さんどう思われます?

今日話を聞いたばかりで詳細を知らないので、良し悪しの評価は控えさせて頂いて、以下感想を少し。

あれ、携帯でYouTubeビデオとか言ってなかったっけ?とも思ったのですが、国や年齢層によっては主流が低機能機種なのでオーディオのみのアプローチというのも案外捨てたものではないかもしれませんね。(注:日本の方々は驚かれることと思いますが、アメリカでは未だにネット接続なし、カラーなし、テキストのみ、折りたたみもできない、なんてものを使っている人が結構います)日本や韓国など携帯先進国にはこういうもの既にあるんじゃないだろうかとも思いますが、どうなんでしょうか?ぜひ最近の携帯コンテンツ関連状況を教えてください。ブログ等にオーディオクリップをのせるのは新しい話ではないと思うのですが、著作権コンテンツだったりサウンドミックスできたりというところが新しいのかな?

ちょっと感心したのは、開発はUSなのだけど携帯コンテンツに関しては後進だということを認識して、まずは敢えてヨーロッパやアジアに進出したというところ。良い傾向です。現在は15カ国に進出したと言ってました。それからプレゼン、デモ、Q&Aの受け応えも、明快でスムーズでした。アメリカ人全般的に人前で話すスキルは高いですが、5分という短い時間で何をやっているかを明瞭に説明し観衆をひきつけるというのはそう簡単ではありません。良くできていたと思います。

”それなり感”があるな、と思ったらしっかりVCがついていました。有名なMayfield、それからGuy Kawasaki氏のGarage等が投資しているとの事。さて今後どうなるか、見守るとしますか。

後進国と言えば…Razzと何の関係も無いですが、個人的にはアメリカでの携帯に関して1つ悩みが。どうしたらあのベルトに携帯を引っ掛けるということを撲滅することができるのでしょうか…?彼らに疑問はないのだろうか…?

ちと取り留めないですが、今日はこの辺で。