tech venture business » Archive of '10月, 2008'

ディベートに見習う The art of spin

どうも。残り一ヶ月を切った米大統領選挙ですが、昨夜は第2回目のディベートが行われてましたね。ご覧になりましたか?

一視聴者としてみると、ロジックがおかしいとか、答えになってないとか、これはすごいとか、あーだこーだと言えるわけですが、自分がその立場になることを想像するとこれは相当に難しいことだなと思います。モデレーターが事前に明らかにしていない質問をして、候補者がそれに制限時間内(確か2分とか)で答えるという形になっているのですが、事前にかなりの準備ができコントロール可能なプレゼン等と違って、Q&Aというのはかなり厄介ですよね。しかもこの制限時間からして、Yes/Noのような短い答え以上の答弁を期待しているわけです。

こうした際に重要なのが、spinするということです。この言葉、日本語にしづらいのですが、詭弁とはちょっと違って、どちらかというと、以前に触れた「物は言いよう」というのに近いかもしれません。厳密な定義はさておき、一般的な用法では、自分や自分が代表している組織に有利になるような点に論点を持っていくとか、非難されている或いは疑わしい事象等について活用する情報やその表現を上手く選択することで良く見えるようにするということです。

PRや政治家はそれこそが仕事というくらいですが、程度の差こそあれ、マネジメントや営業の人も頻繁に経験しているかもしれません。さらにわかりやすい例では、就職の面接なんかがそうですね。

私の関わるベンチャー企業の売却では、例えば、「なぜ会社を売るのか」ということをポジティブに答える必要がありますし、収益やトラフィックが低い場合には、そういった数値が会社の価値を必ずしも反映しないということを論じる必要があったりします。

そのようにスピンはかなり重要なのですが、私はQ&Aのような咄嗟の場面はまだまだ苦手で、ともすればSarah Palin状態になってしまうこともあります。常々英語のせいにしてたのですが、今日ふと、では日本語だとできるだろうかと思いをめぐらせてみました。確かに英語でやるよりはましでしょうが、やはりある程度考えて準備をしていなければ日本語でも厳しいような気がしますし慣れというのもあると思います。ただ、私が日本ではそういう立場にいなかったせいかもしれませんが、こういう答弁やスピンの重要性はアメリカや他の欧米諸国での方がかなり高いように思います。論理の背景の違いだと思うのですが、実際どうなんでしょう。いずれにせよ更なる精進が必要そうです。

そんなこともあって、ディベート楽しく鑑賞しているわけですが、もう一つこの点で面白かった映画を思い出したのでご紹介します。数年前にでたもので、Thank you for smokingというものです。タバコ産業のロビイストでPRを担当している主人公が、逆風の中巧みなスピンを活用する風刺コメディで、他にもアメリカ文化の様々な要素が入り混じった中々良く出来た映画です。ちなみにこの映画のExecutive Producerには以前にも触れたPayPal創業者Peter ThielとMax Levchinが名を連ねています。あまり華のないシリコンバレーとしては珍しいのではないでしょうか。以下、映画の一部です。

苦労話、上手くなる方法などありましたらぜひお寄せ下さい。
では今日はこの辺で。

ベンチャーが金融危機から学べること

どうも。今起こっている金融危機はかなり深刻で、他のニュースどころではないという状況でさえあります。

特に$700Bの公的資金を入れる策が却下されたここ数日は、これがシリコンバレーのベンチャーにどう影響するのか、というようなテーマがブログなどあちこちで語られていますが、細かいことは抜きにして、私は以下の二つがベンチャーが心に留めておくことだと思っています。

一つは、今後の経済状況、そしてこれまでの投資銀行がなくなったという相当な出来事の意味がどういう形であらわれるのか、は誰にもわからないので、結局できることと言えば常識的なことくらいだということです。

資金調達の交渉中であれば可能な限りの資金をロックするとか、節約してできるだけ手持ちの資金が続くようにするとか、売上げを出す施策に注力するとか、ですね。

ベンチャー企業の成長予測では、製品が出るまで予測の2倍以上の期間がかかり、コストは予測の3倍とか(数は適当ですが)言われることがありますが、こういう状況下では様々な識者が諸説を述べても予測は的外れになることが多いと思います。今回の証券会社・投資銀行のドミノ倒しで明らかなように、事象の悪化は予想より遥かに早く進みますし、悪いというレベルも予想より酷いこともあるでしょうし、その悪い状況は予想より長引く可能性があります。

そういう時には最悪を念頭において、自分がコントロールできる部分に注力するしかないと思うんですね。それ以外の事に一喜一憂するわけにもいかないですし。

二つ目は、物事をどう表現するかということは非常に重要で、一度何らかのイメージがつくと後で変えるのは大変、ということです。

今回の公的資金の合意に失敗したことの理由の一つに、それが「bailout」として語られていたということがあると思うのです。確かにそうなのですが、私の理解する限りこの措置は例えばベアスターンの救済等とは意味合いの異なるもので、不良債権を引き上げ信用収縮に歯止めをかけることで事業会社、ひいては従業員でもあり投資家でもある国民の生活を守る目的のはずです。

Bailoutという言葉は通常の用法だと、例えばお金持ちがコネとお金を使って裏の手で自分の子供が退学になるのを防いだ、等のネガティブな意味合いがあります。なので、文字通りにとって実際の中身も理解せぬまま、「お金持ちのウォールストリートの人達を助けてあげるとは何事だ」という感情論が先を行ってしまった感があります。

ちょっと強引かもしれませんが、これは自社の製品やサービスをどのように位置づけそして表現するか、ということにも当てはまると思います。投資家に対しても顧客に対しても、言葉やイメージは独り歩きしてしまいがちで、一旦自分の思っていることと違うように捉えられてしまうと、後から「いやそういう意味じゃなくて、実は…」と言おうとしても聞く耳をもってくれる人は少数ですし、言い訳に聞こえてしまったりします。最初のコミュニケーションは大事ですので、そこは念入りにすべきだと思います。

さて、この公的資金、先程どうやら上院ではOKがでたようですが、今後どう推移するでしょうね。今日はこの辺で失礼して、ニュースを見ることにします。そろそろ何らかの光が見たいですね。

ではまた。