tech venture business » Archive of '6月, 2008'

新米起業家を支える仕組み

どうも。またちょっと間隔があいてしまいました。

近頃身体の調子が悪いということをネタにしている感がありますが、眼が回復してきたと思ったら、今度は何かに突如アレルギー反応したらしく湿疹です。どうなってしまってるんでしょうね、人間ドックか御祓いにでも行ったほうがいいですかね。元気玉でも頂きたいところです。それにしても「人間ドック」って不思議な言葉ですよね…。

それはさておき、今日はベンチャーを支えるのインフラの話をちょこっと。

以前、新種のインキュベーションだとか、Tech Meetup等のカジュアルなイベントについて触れましたが、その他にも各種団体(起業・技術関連NPOや大学同窓会系、出身国系等)主催のイベントや勉強会、メンター制度等が数多くあり、起業家或いはその予備軍がネットワークを広げたり先人の知恵に学ぶ機会がたくさん存在しています。近頃はSNS等の仕組みを通じて新たな会を設けることはかなり簡単になってきており、その数は益々増えているようで、差別化も難しいという印象です。

ベンチャーを囲むいわゆるエコシステム(エンジェル、VC、弁護士、アドバイザー等)がしっかりしていることに加え、こうしたイベントなどのサポートグループが豊富にあることは、シリコンバレーがシリコンバレーたり得る所以でもあるのですが、それでも当地で成功した有力な人々と繋がりアドバイスが受けられるかというと、それは簡単ではないという一面もあります。

恐らくそういう点をついて、ということなのだと思いますが、近頃は初めての起業家に対して、もうちょっと絞ったサポートを提供するような営利のサービスが増えているような気がします。例えば、VCとの朝食会とか、既にある程度成功を収めた起業家との夕食会とか、をメンバーシップ制或いは招待制という既にスクリーニングされた新米起業家に提供するというものです。

ごく最近目にしたものでは、PayPalマフィアの一員であるDave McClureが始めたStartup2Startupが挙げられます。招待制の参加者と著名なスピーカーからなる月一ディナー会で参加費は$90のようです。次回のスピーカーはYouTubeのChad Hurleyとのこと。招待状をもらえるよう自己申請/他己推薦することもできるようなのですが、基準は中々厳しく、

Provide 3 references to notable geeks / entrepreneurs / angels / VCs you admire, and who’d also be willing to loan you their car keys.

ということも含まれています。知識を提供する側にも、他の参加者にとっても、皆にメリットがあるような質を求めているというのは分かるのですが、車を貸してくれるほど親しい名の知れた人との繋がりが既に3つもあれば、こういう会合に参加しなくても何とかなると思うんですけどね。

その前の段階こそが、特に外様には難しいと思うのですが、それは個人的な紹介でやっていくしかないんでしょうか。もちろん個人的に人脈を広げていくことは常に必要だとは思いますが、この部分をなんとか組織的にサポートすることはできないものですかね。アイディアのある方、既に機能しているものをご存知の方がいらっしゃいましたら、ぜひご連絡を。

どのような会合にせよ、イベントの質と参加者の質という問題がありますし、マンツーマンではないので当たり外れもあるでしょう。結局は、参加者自らが自分の目的をしっかりと据えて、取捨選択していくべきものなのかもしれません。皆様、ぜひ上手に活用してみて下さいね。

では今日はこの辺で。

ベンチャー企業と福利厚生

どうも。

今日はAsk the VCのエントリーでベンチャー企業の福利厚生に関するものがありました。事務的ではありますが社員をケアするという重要なことなので触れておきます。

アメリカでは医療保険や歯科保険、障害手当てや生命保険、或いは401K等の年金といった福利厚生は、大変複雑且つ企業ごとにかなりの違いがあります。各企業がどのプロバイダーのどのようなプランオプションを提供し、費用負担を企業と従業員の間でどのようにするかも決められるわけです。大まかに言えば、有名大企業は従業員の負担額が少なく且つ良質のプランを提供し、規模が小さく資金力の乏しい会社だとその逆になるかチョイスが極めて限定されるという図式にはなりがちですが、企業ごとのポリシーは違いますし、個人個人が年俸と合わせて交渉することも多く、同企業の従業員でも差があったりします。

とはいえ、自分がアメリカで起業するつもり、或いは軌道に乗ってきてそろそろ仕組みを作っていかなければと考える際には、何らかの相場が知りたいですよね。先のエントリーではVCから出資を受けているベンチャー企業に関して次のようなコメントがありました。

A typical VC backed company will offer to pay 100% of a good benefits package for the employee and between 0-50% for dependent coverage. A good package will include medical options PPO and HMO and dental, long-term disability and a minimum of 10K life insurance with an option to buy more.
まあまあの包括的な医療・歯科保険を従業員に対しては100%カバーして扶養家族には50%カバーする。それに長期障害手当てと最低100万円程の生命保険(自己負担で引き上げ可能)をプラス。

とまあ一口に言えばそうなのでしょうが、医療保険のPPOといっても免責金額、自己負担比率などのチョイスもかなり幅が広いのが実情です。実は私が今の会社に入ったときには仕組みが何もなくて、結局医療保険のみ提供してもらえることになったのは良かったのですが、私がリサーチ及び比較検討の担当に任命されてしまって、選択肢の多さ、実質的な適用範囲と料金体系の複雑さに、メニュー見ているだけでお腹一杯という状態に辟易した事があります。

私の場合はアメリカの困った医療制度事情に直に触れることになり勉強になりましたが、ベンチャー企業で日々格闘している方々にはこういう作業に時間をかけることはお勧めできません。これから従業員が増えてゆき、より魅力的で総合的な仕組みを作っていかねばならず、支払い等の事務処理も増えるというスケールの問題もありますし、且つ、最近ではコンプライアンスの問題も複雑なので、こういうHRのファンクションをまるごと外部化することをお薦めします。この手のサービスプロバイダーは数多く、HRアウトソーシング、またはPEO(professional employer organization)と呼ばれるものがありますし、更に幅広くバックオフィス全般を担うものもあります。

相場という観点からすると、私の知る範囲では年金に関しては余程の規模にならないと無かったり、外部から資金調達がない或いは初期のベンチャーでは医療保険も一切無しということも多いという印象です。この辺は周りにも聞いたり初期のメンバーのニーズを汲んでバランスを取る必要があるのではないかと思います。

福利厚生だけで参画するベンチャーを選ぶということは稀だと思いますが、唯でさえ先行き不安なベンチャーですから、できる限り他の心配事をさせずにすむようにしたいものですね。

では今日はこの辺で。