tech venture business » Archive of '11月, 2007'

シリコンバレーのマフィア達

どうも。今日は新種の、しかし極めてシリコンバレーらしい繋がりの話です。

以前にもちょっと触れたと思いますが、ネット上での決済サービスにPayPalというものがあります。2002年にeBayが買収し、その後もかなりの成功をおさめていますが、今では以前の従業員は殆ど残っておらず、MBAがわんさかいるキチッとした会社です。では元のPayPalのメンバーがどうしているかというと、かなりの人が起業し、その他も他のベンチャーに参画したりVCになったりしています。

分野はインターネットに限らず多岐にわたっていて、投資会社、慈善団体、太陽熱発電などのエコ企業から、果ては火星への植民を志している企業まであります。ネット系でその人達が絡んでいるものをざっと挙げても、YouTube、Facebook、LinkedIn、Digg、Slide、Yelpなどがあり、「卒業生」の活躍ぶりは目覚しいものがあります。

その裏には、元からそういう優秀な起業家タイプが集まっていたとか、PayPalでの経験に感化されたとかだけではなくて、彼らがその後も連絡を密に取り合って、お金と人、アイディアとアドバイスが回りまわる独自のネットワークを築いたということがあります。これは強いですよね。リッチがさらにリッチになっていく仕組みの王道です。そんな彼らは自らをPayPalマフィアと称しているとのこと。

そのマフィアとは一体どんなものなのかを探る記事が昨日のFortuneにありました。長いのでリンクを張るだけにしますが、面白かったのでぜひ読んでみて下さい。PayPalがどのように人材を集め、どのようなカルチャーを創り、どのような軋轢があり、渦中の人が何を感じていたかに触れることができます。こうしてみると、PayPalはいわゆる成功法則からはかなり外れていたようなので興味深いです。

共同創業者のPeter ThielやMax Levchinはかなり尖がった人達のようです。この記事ではその変わり者ぐあいを些か強調しすぎている感がありますが、ネタとしては面白いです。例えば、Peter Thielはサンフランシスコの豪邸に住んでいるだけでなく、執事がいるとか。執事って一体どこから探してくるんですか。ハイソと無縁の私には到底分かりません。また、記事にちなんだ洒落として彼らがマフィアっぽくしている写真があるのですが、かなり笑えます。

シリコンバレーにはこれ程組織だっていなくても、数多くの人的ネットワークが複雑に絡む生態系があり、「正しい」人脈の重要性を思い知らされます。そういったmeritocracyをベースとしたシリコンバレーインサイダーにどうやってくいこんでいくかは、私にとっても今後の長期的な課題になりそうです。

今日はこんなとこで。ではまた。

「Work 101」

どうも。今日は仕事における処世術について、先日たまたま本屋さんで手にした本が面白かったので、紹介したいと思います。

組織の中で自分のやりたいことを実現し、人から認められ、昇進したり等することは、残念ながらそれ程容易なことではありませんよね。良い仕事さえしていれば上手くいくはずだというわけではなく、暗黙の了解、不文律が結構あるものです。人によっては早い時点でそういったものを感じ取ってサラッと世を渡っていくのですが、私はあまり得意ではないですし、若い頃を思い返せば、そういった不文律の存在に対しても本当に鈍かったなぁと思います。

この本は社会に出る学生や新社会人向けに、時には厳しく、時にはユーモアたっぷりに本音を伝え、その現実を踏まえた上でどのように自分にプラスになるようにしていくかを、詳細にアドバイスしています。ビジネスランチの作法から、社内外での人脈の築き方、苦手な上司の対処法、自分の実績のアピールの仕方、仕事の辞め方から次の職探しまで、かなり実践的な内容です。

アメリカ(特に西海岸)の多くの企業はカジュアル且つフレンドリーなので、一見何でもありのように感じますが、実はそういった不文律は結構ありますし、また人の回転が速く、下の人を育てるというカルチャーがあまりないので個人個人がゲームのルールを理解して処世術を身につけていくことは、ある意味日本でよりも重要だったりします。アメリカの企業に勤めていて、そのことを薄々感じていらっしゃる方、一読の価値はあると思います。

どちらかというと大企業で生き延びるという視点で書かれていますが、小さな組織でも役立つことは少なくありません。自社内においてもそうですし、また、自分の顧客が大企業である場合、担当者の置かれている立場を理解するという意味でも非常に為になります。他の企業で働いた経験がないまま起業した方々には特に、顧客やパートナー企業の方々との関係を築いていく上で、「あちら」の世界を垣間見ることができるので役に立つと思います。

日本でも最近は転職当たり前の世界になってきていますから、適応できる部分もあるかと思いますし、日米カルチャー比較としても面白いと思いますので、興味のある方はぜひ。

日本企業でのこういった不文律について良い本がありましたら、ぜひ教えて下さい。