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サービス提供側ユーザーの増やし方

ちょっと間があきましたが、あらためて。

初期のユーザー獲得はそれ自体一筋縄ではいかないですが、何らかの市場(マーケット)的なサービスを自社がプラットフォームとなって提供する場合、エンドユーザーとサービス提供者の双方を獲得してスケールしていく必要があり、それはまた新たなチャレンジがありますよね。

こういうサービスの場合は、鶏と卵の部分もありますが、初期は供給側の数を増やすのが鉄則です。買うものや受講するもの自体がなければ始まらないですから。

ではどうやってユーザーもいないなかで供給側を増やすのかというと、色々とやり方はあると思いますが、最も一般的なのは、供給側の対象を洗い出してコンタクトしてベネフィットを説明して口説き落とす、ということでしょう。このやり方は、類似のサービスが既にあり、「あのサービスよりも良いので使ってみて」という話しをする場合には結構すんなりいく場合も多いですが、サービス自体が目新しいものの場合、かなり苦戦します。

その場合は、まずは少数の成功事例を作ることに徹するのが良いようです。この場合の成功事例は例えば「Aさんはこのマーケットでオンラインコースを提供して3ヶ月で500万円稼ぎました」みたいな、分かりやすく定量的なものが効果絶大。そうすることで供給側はオーガニックに口コミで増える確率がかなり高まります。

その事例を作るためには、その後のスケールは気にせず、できることは何でもやってみるべきだと思います。例えばAirbnbではファウンダーが提供者の部屋の写真を一軒一軒自ら取りにいったとか、その他にもいわゆるベタな話しを多く聞くと思います。こういう類のスケールは軌道に乗ってから考えれば良いので、まずはとにかく提供者の成功を支援するためにいろいろ手を尽くすわけです。

で、成功事例が得られたら、それを使って上手くプロモートする術を考える必要がありますが、きちんとできていれば、初期の獲得に比べてどんどん楽になるはずです。

もう一つは、市場の種類にもよりますが、他のサービスとリンクしたり、CCなど何らかのライセンス下で流用できるものを活用して、提供するものの絶対数を短期間に増やすというものあります。こちらは工数が少ない広く浅くの作業ですので、上記と組み合わせてやるのが良いかと。

重要なのは、初期の時点で有料広告等の自動的な方法で供給側の数をがんがん増やそうと考えないことだと思います。まず無駄遣いになりますし、重要なフィードバックが得られません。一見遠回りに見えても、使う人にかなり密接して経験をおさえ製品を改善し、同時に全体のボリュームや信頼度を上げる努力をする、というのが実は近道になるはずです。

具体的な例を見るのが分かりやすいと思いますので、興味がある方はぜひ、Udemyがどのように最初の5000コース提供者を獲得したか、というQuoraでのQ&Aを見てみてください。

では今日はこの辺で。

 

 

 

 

組織をどうスケールすべきか

スタートアップが急成長する時に最も難しい問題の一つが、如何に組織を拡大するかです。短期間にたくさん採用する必要があるけれども、急いで当面必要なスペックだけにフォーカスすると、後で後悔することになるケースは多いものです。

エンタープライズ向けのサービスの中で最もホットな企業の一つに、Dropbox法人版ともいわれるBoxがあります。ここ数年で急成長しているスタートアップです。そのCEOのAaron Levieは若く、若干27歳。かなりセンスがよく、次代のホープ的な形容をされることが多いFounder & CEOです。

その彼が組織のスケールについて学んだこと、というのが中々参考になるので、以下コツとして上げられている要点を紹介します。

1.各部署やチームが必要な人材を選ぶだけでなく、「人事」のような中央横断の組織をおき、会社全体のカルチャーなどの観点からフィットを判断する。

2.「the 10-person test」を通るか見極める。採用する人が例え400人目の社員であろうとも、その人をオリジナルの10名チームに欲しいかどうか、を考えるということ。組織が大きくなったからといって採用基準を下げる必要はどこにもないはず。

3.例え30名の組織であっても、何もしなければ築こうとしているカルチャーは伝わらない。人はそれぞれ過去の経験から、組織とはどういうもので、どのように上司や部下や同僚とコミュニケーションをすべきか、ということに関して既成概念をもっているものだ。なので、些細なことでも(判断などの)行動が常にカルチャーに見合うものであるように注意すべきだし、新しく採用した人にカルチャーを伝えたり、定期的にリーダー達がスピーチを行うなどのコミュニケーションの仕組みが必要だ。

4.組織が35名を超えるくらいになると、ファウンダーがすべての決定にかかわる事は不可能になる。かかわり続けると大きなボトルネックになるので、例えばCOOなど、スケールを可能にするスキルを持つ人を連れてきたり、リーダーシップチームをつくる必要がある。

5.CEOとはどうすべきか、ということに関する知識をできるだけ習得する。本や動画、ネットetcで、戦略などビジネスに関するものの知識を得たり、いろいろなCEOの話に触れたり、問題を解決した過去のケースなどについて学ぶべき。判断材料となるデータがないときに、こうしたモデルはとても役にたつ。

6.自社がベストであるべき点にフォーカスを定め、その分野で特に知られる企業で経験を積んだ人を採用すべき。例えば、最高のカスタマーサポートを提供する、と決めた場合、カスタマーサポートのリーダーは例えばZappos出身から雇うべきで、Oracleから雇うべきではない。

 

如何でしょう。なかなかキチンと実行するのは難しいけれども、大事なことですよね。ちなみに、Boxは「法人向け」といった枠にとらわれず、色々なベストプラクティスを取り入れています。最近のTweetでは以下のように言っています。これにはかなり納得。

Future enterprise software leaders will build like Facebook, design like Square, measure like Zynga, and support like Zappos.

では今日はこの辺で。