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野球とベンチャーと発想の転換

どうも。 先週末はSuper Bowlだったわけですが、観られた方いらっしゃいますか?私はアメフトはどうも苦手なのですが、Super Bowlの一大イベントぶりを見るにつけ、アメリカ人は本当にアメフト好きだなー、と感心してしまいます。

さて、スポーツとビジネスの関連性はよく言われることかと思います。大企業の社長さんや管理職の方が人事とかマネージメント論を語られるときにスポーツを引き合いに出されることは結構ありますし、ここアメリカではスポーツ用語が日常ビジネス会話に使われることが結構あります。(例えばtouch base with=連絡を取る、Ballpark figure=概算、おおよその見積もり 等は野球から来た言葉ですごい頻度で使われます) 私はスポーツ観戦が好きとはいえないので時々ちょっと話題に戸惑うこともあるのですが、まあゴルフみたいにビジネススキルの一環として割り切って、野球ぐらいはちょこっと話せる程度にしておこうと思っています。(特に日本人選手の話をふられることも多いですしね)

そこで野球とビジネスの話。精神論では無く、実際的な応用が可能だという点で、ビジネス界にもファンが多いものに、Michael Lewis著のMoneyballという本があります。数年前に出版され日本でも話題になったようですので、読まれた方もいらっしゃるかと思います。松坂選手の交渉の一件などでメジャーリーグがどれだけお金の動くものか皆さんご存知かと思いますが、この本はサンフランシスコの対岸オークランドを拠点とするアスレチックスが、貧乏球団なのにも関わらずなぜこれ程成績が良いのかという謎を追究するノンフィクションです。

要点を簡単に言うと…アスレチックスのGM、ビリー・ビーンは、球団の限られた予算を最も賢く使って強いチームを作るために、大物選手を高額な報酬で集めるのではなく、選手市場の非効率性をついて、過小評価されている選手だがチームに多大な貢献をしそうな選手を低額で獲得している。いわば株式投資でいうバリュー投資みたいな感じですかね。その方法として選手のバリュエーションを正しくみるために、膨大な統計データを活用し、従来の打率・打点・ホームラン数、防御率・勝ち星といった指標ではなく、チームの成功に直結する独自の判断基準を導入したということです。

実はこの本の副題は、The Art of Winning an Unfair Game。つまり規模や財政面で大きな差があるような環境で如何にして勝つかということ。ベンチャーと大手の競合ということに応用出来そうではありませんか?

直接的には、自分のベンチャーにとって必要な人という基準を、独自の判断基準で定義することで、大手よりは待遇が悪いにも関わらず、自社にとって優秀な社員を集めることが可能になる、といった人事的な観点に応用できるでしょうし、他企業の買収ということにも応用可能かもしれません。バリュエーションの方法のデータ分析基準という点に限れば、セールスやマーケティングなど様々なことに関して従来の指標ではなく、別の指標でものごとを見てみる、ということに適用できそうです。

後者の例として、マーケティングに関する中々面白いエントリー(Secrets of Success: What Baseball can teach you about your business) が先日ありました。簡単にご紹介しますと、自社の各種マーケティング事象がウェブサイトへのトラフィック、そして自社製品のベータ版サインアップにどの様な効果をあげているかを検証しています。その結果、有効な事象としては、お金も時間もかけた正式なプレスリリースではなく、むしろ自社ブログで良いエントリーを書きそれがredditのトップページに現われた時や、ゲストブロガーのエントリーを掲載した時、そして講演会で話した時、であったとのこと。そしてブログで可もなく不可もないようなエントリーを書いた時にはトラフィックは多いが、ベータ版サインアップには繋がっていないとも。

もちろんマーケティングの費用対効果という問題は、誰もが気にするところであり様々な取り組みがなされているのですが、まだまだ勘によるものも大きく、大企業ではシビアに検証されていないという現状があります。ベンチャー企業のマーケティング費用は総じて少ないですから、賢く使うべきところだと思います。Web2.0の流れで少額でバイラルにマーケティングをするということが浸透してはいますが、独自の分析で検証してみるというのも良いかもしれませんね。

この本にあるようなデータを解釈する指標をオリジナルに考えるというのは簡単ではありませんが、そういった視点を忘れずに日々鍛錬することで報われるのだと思いますし、他の企業が気付いていない非効率性を見抜いてコスト削減やテクノロジー/サービス開発に活かすということは、ベンチャーにとっては非常に学ぶところがあると思います。

この本を読んでから数年経っているのですが、ベンチャーに役立つという観点で読み直すと新たに面白い発見が出来そうな気がしますので、時間が取れたときに再読してみようと思います。 野球好きでもそうでなくても、なかなか面白い本ですのでぜひ読んでみてください。

そういえば、このビリー・ビーンズ氏、先月シリコンバレー拠点のCRMソフトウェア会社、NetSuiteの社外取締役に就任したらしいですよ。IPOに向けて着々と準備中というところなのでしょうか。

ではまた。