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ベンチャー企業のイタイタしい身売り

どうも。今日は本業、M&Aの話です。以前、ベンチャー企業の売却vs.身売り、ということについて書きましたが、今日はこれぞ身売り、というニュースがありました。

元々はオンラインTVガイドで後に動画検索も加えたインターネットサービスのMeeVeeですが、何とプレスリリースを通じて売却の意思を通達したのです。

これが、件名はOnline Entertainment Portal MeeVee In Acquisition Discussions (MeeVeeは売却交渉中)なのですが、その内容は読んでいてかなりイタいものでした。これこそ、言わぬは言うに勝る、が悪い形で現れてしまったという感じで、「誰でもいいから買ってくださーい」と請うているのがありありと出てしまっているのです。

MeeVeeはこれまで幾つかのVCから$24Mもの資金調達をしてきたそうで、煮詰まってからモデルに変更を加えたり、人員削減したりしてきましたが、万策尽きたというところなのでしょうか。それならば、少しでも債権者・株主へのダメージを和らげるためにこのような手段を取るのは致し方ないとは思いますが、そうした切羽詰った状況ではない限り、売却においてこのアプローチは悪いお手本と言わざるを得ません。

プレスリリースは短いですので、まずはこちらの本文をご覧下さい。

何が悪いかというと、まず、この手の話をプレスリリースで公募すること。清算前の最終手段であれば、こうした通達や、リスティングサイト、そしてeBay等のオークションサイトを活用するというのもありでしょうが、通常はもっと密かに選択的に行われます。

そして、全体のトーン。これは何を言うか言わないか、そして言うならばどのように言うか、という思考の総決算なわけで、文章の構成や使用する言葉等によって、伝えたい事がその通りに伝わるかを綿密に計算しなければなりません。全体像なので、一つ一つを指摘するのも無意味かもしれませんが、分かりやすさのために例をあげます。

例えば、「最高の長期的利点とシナジーが期待される幾つかの買収候補と現在話をしている」と言いつつ、「興味のある人は連絡下さい」としています。これでは、現在話し合い中というのは嘘か、或いは、話しているとしてもまだかなり浅い段階だというように聞こえてしまいます。(話し合いがかなり進んでいて、本当に興味を示している相手がいる場合、一時的に外部へのそうしたコミュニケーションは一切遮断されるのが通常です)

そして連絡先もSteve HugheyというDirector of Engineeringへ直接メールすることになっています。最後にあるように今では残る7名となってしまったようですが、連絡先がエンジニアの長というのは、もう機能していない組織なのだな、と思わせてしまいます。

最後にもう一つ例を上げると、トラフィックデータが2007年8月と3月を比べているところ。もう数年やっているベンチャーなのになぜ、昨年8月なのかなと思いませんか。ちょっと調べてデータをみてみると、2007年5月辺りに一時かなりのピークがあったのですが、8月にはガクンと落ちています。一番の底値と比較しているんですね。こうなると、3月というのも実は去年の話なのではと疑ってかかりたくなってしまいます。

というわけで、かなり厳しいレビューをしてしまいましたが、反面教師ということで。関係者の方すみません。

何事もそうですが、売却においても早く検討して準備をするに越したことはありません。早い段階でなら色々と取れるアプローチもありますし、交渉にも優位に臨めます。そしてその事業を継続拡大するための「新しい家」を見つける事が可能です。もう資金が尽きて身動きが取れないということになってからだと、話し合いができたとしても不利な立場になりますし、自分がせっかく創り上げたものの行く末にまったくコントロールが及ばないという残念なことになってしまいます。皆様お気をつけ下さい。

というわけで、今日はこの辺で。ではまた。

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