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YouTubeから考えるVCの構造問題

あらまあ、Google本当にYouTubeを買収しちゃいましたね。Googleはこれまで基本的にはテクノロジー買いだったので如何なものかと思っていたのですけどね。YouTubeがいつかは買収されるというのが次第に明らかになってきて、”他企業にもっていかれては困る”という心境が非常に強かったのだと思います。$1.65BのStock deal、設立から僅か18ヶ月のベンチャーに対して多額のものとなりました。膨大な数の動画を扱うためインフラにかなりのコストが掛かっておりburn rateは一月$2Mくらいだったようですが、投資額はさほどでもなかったようなので、YouTubeの投資家はかなりのリターンを得たはずです。VCで投資していたのはシリコンバレーの有名VCであるSequoiaで、計$11.5M投資しており、TechCrunchによるとこれでYouTubeの30%を取得していたようです。となると投資の40倍位のリターンですね。はあ、凄い金額…。庶民の私は宝くじでも買いに行きますかね。
この買い物がGoogleにとって良いものだったかは今後のお楽しみとしておきましょう。

さて、ハイリスク・ハイリターンのベンチャー投資においてもこのような特大ホームランはそうあるものではありません。VCが投資を募るファンドの投資期間は大概5~7年くらいで、その間に様々なベンチャーに投資をして、期間満了時に全体としてそのハイリスクに見合ったリターンを投資家に返さなければなりません。例えばそのファンドを10社に投資したとします。全てが上手く行くわけではないので、1-2社でホームランをだして、1-3社のロスを補って、残りでそこそこのヒットをだす、というのが通常のパターンになります。なのでホームランとヒットの数と大きさが結果を左右するわけです。

このVCモデルに一石を投ずる事がこの土曜日にありました。シリコンバレーの由緒あるVCであるSevin Rosen(過去にはCompaq、Lotus、Citrix、Cypress Semiconductor等を輩出して来た会社です)が第十番目のファンドへの投資を募っていたのですが、そのファンドをキャンセルすることにし、現時点で$250M-$300M程ある投資確約を受け取らず投資家に返上すると発表したのです。90年代バブルの終わり頃にはこの資金返上がいくつかあったものの、このような一流のVCが資金返上をするのは初めてだそうです。Sevin Rosenは主な理由として、”too much money(ベンチャー市場に資金が有り余っている)”、”too many deals funded in almost every conceivable space (考えられる限りほぼ全ての業界で多すぎる程の企業が既に投資を受けている)”、”terribly weak exit environment and it sees no chances in the foreseeable future (IPOやM&Aのexit環境が非常に悪く、今後好転するとは思えない)”を挙げています。

1点目は先日も書いたとおりです。2点目と3点目の前半部分は程度の差こそあれ同様の意見の方も多くみられます。意見が大きく分かれるのは3点目の後半部分、つまりこの状況が市場のトレンドなのかそれとも構造的な変化なのかということです。Sevin Rosenの今回の決定はこれを構造的な変化だとし、ファンドの構造や運営、或いは投資の方法を抜本的に見直す必要があるということに基づいています。

以前の投稿を読んでくださった方はお察しされると思いますが、私は構造的な変化だという意見です。ここ暫くIPOの件数は確かに少ないですが、 M&Aはかなり多いですよね。ここでVCが問題にしている環境とはリターンの大きさです。つまりM&Aの額がVCが期待している通りに3 塁打ではなく1塁打が多いということなんですね。理由は様々あると思いますが、例えばベンチャーが新分野というより既存製品の付加価値になるようなピンポイントの問題を相手にしている、とか、戦略的な買収を行う企業内に知識・経験が蓄積され買収に対して必要最低額しか出さない、等が挙げられます。これはマーケットトレンドというより、構造的なものだと思うんですね。

もしこの部分が変えられないとすると、VC業界は、1塁打ばかりでも全体としてそれなりのリターンを出す、或いは投資回収期間を短くしたり額を減らす等で盗塁をする様な仕組みが必要になります。これは非常に難しい問題ですが、早急に着手すべきものだと思います。なぜなら多くのVCが期待通りのリターンを出せない場合、ベンチャーファンドへの投資が減り、必要とする起業家に資金が廻らなくなり、起業が難しくなるという状態に陥りかねないからです。

YouTubeの儲け話を耳にしている今日、この問題はあんまり現実身の無い物かもしれません。でも、良い時にというか考える余裕のある時にこそ、悪い事態への対応を含め先の事を考えることが必要なのではないでしょうか。

2 comments to “YouTubeから考えるVCの構造問題”

  1. Greetings, I do believe your blog may be having web browser compatibility issues.

    Whenever I take a look at your blog in Safari,
    it looks fine however, when opening in I.E., it’s got some overlapping issues. I simply wanted to give you a quick heads up! Other than that, fantastic blog!

  2. Thanks! Will take a look.

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